カポーティ

ティファニーで朝食を」の原作で知られるトルーマン・カポーティが、自らの新境地を開拓すべく書き上げた衝撃作品「冷血」。それは、一家四人の惨殺事件を取材し、逮捕された犯人ペリーに並々ならぬ好奇心を抱いて近づき、ペリーへの6年に及ぶ取材の後に書き上げられた作品だ。しかしカポーティはこれより後、一冊の作品も書き上げることがなかった。「冷血」という作品をめぐり、カポーティに一体何があったのか。
何がカポーティを壊したのか。それは明確には結論付けられていない。ただあったことを淡々と描いてる印象。しかし、カポーティはひたすら弱い。作品のためにペリーを利用して友人であるかのように振舞っているだけだと言っておいて、最後彼の死刑が執行されるそのときには哀れに涙を流してみせる。こんなひどい経験をして立ち直れないと嘆いてみせる。書き上げた作品は素晴しかったかもしれないが、あんまりにも覚悟がなってないじゃないか。後先考えずに事件に関わり、翻弄され、彼は壊れた。観ていて私はなんだか腹が立ってきた。
しかしこのカポーティ役のフィリップ・シーモア・ホフマンの演技はほんと怪演だな。それだけでも観る価値がある。