三浦しをん/私が語りはじめた彼は

私が語りはじめた彼は (新潮文庫)

私が語りはじめた彼は (新潮文庫)

「彼」についてはほとんど語られないまま、彼の周りの人たちに少しずつ散りばめられた狂気が淡々と描かれている連作。
三浦しをんは一番初めに読んだのがオモシロエッセイの類だったから、どうもそのイメージが抜けなくて困る。この作品みたいに不穏な物語を淡々と綴られると「文学少女(?)の憧れで、こういう話しの形態を器用に模写して書いてみせたんでしょう?」と穿ってしまう。話の中で子供が、引っ越した家に植えたい木を唐突に「バナナ」と答えていたけれど、このあたりのオモシロイ感じが、やっぱり本性でしょ?と。
文学を良く知っている人だよなと思う。